我が家にテレビがやってきた①

６月６日、男は一人決心していた。

この数ヶ月、いつの間にか「それが当たり前」であったかのような錯覚を覚え過ごしてきた。
しかし、やはりその状況には限界があった。
情報化社会から取り残される孤独感、音と映像のない部屋から感じる虚無感、

何より、一度わざわざきてくれたN〇Kの集金のおばさんに
「うち、ないですから」と言ったときの、あのおばさんのやるせなさの表情には、耐え難いものがあった。

「う、嘘じゃないんですっ！今聞こえるアニメは、YOUTUBEからなんですっ」

必死の弁解が通じたわけではなかった。おばさんは何も聞かなかったかのように、寂しげな後ろ姿を印象づけるかのように去っていった。

「今どきテレビがない所なんてあるはずがない。しかも玄関にはN〇Kのシールが張られているのに・・・」

貧乏学生への同情か、それともあちこち歩き回って疲れているのか、肩を落として去るおばさんを、
ただ男は申し訳ない気持ちで眺めていた。



そんな日常から、脱する時が来た！
今こそ、決心し、行動するべき時だ！


続く